指輪事件からしばらく経ち、クノスペで降魔祭が行われる季節になっていた。「年に一度の恒例行事」だからと赤いドレスを纏ったシトリーがクノスペに出かけて行った。他のメギドたちもそれぞれ休暇を取っている。しかし指輪は未だ見つかっておらず、ソロモンは気を揉んでいた。居合わせたブネとアスタロト、暇にしていたダンタリオンとグラシャラボラスを引き連れ、ソロモンはポータルを使いクノスペへ向かう。クノスペには視察と称して、サミア王女ことヴィネも遊びに来ていた。
クノスペの路地裏にはネズミ型の幻獣が蔓延っていた。ネズミ幻獣がフォトンスポットである地下に集まっていることに気づきソロモンたちが調査に向かうと、そこでシトリーと遭遇する。毎年この時期になるとネズミ幻獣種がヴァイガルド中から集い、種の王を決めるという。シトリーは毎年街を訪れ、王として強力な変異体に進化する「ブラッククロース」が完全体になる前に討伐していたのだった。しかし呪いの指輪がフォトンを供給する影響で今年はブラッククロース化する個体が一体で済まず、シトリーは焦りを見せる。
一方、クノスペに来てすぐソロモンとはぐれたダンタリオンは迷子として預けられた孤児院で「里帰り」していたアモンと合流。その後二人はベヒモスを連れたライオと遭遇する。ダンタリオンはソロモン探しを諦めてそのままアモン共々キャラバンに同行することを決めた。キャラバンはフーゴの遺品から売れそうな物を回収するためトーターバウムを訪れる。
そしてアモンはライオが自分を虐待してきたかつての父だということに気がつく。フーゴの身代わりに飲まされた薬の影響で老人と見紛うほどに老いていたが、端々に出る暴力的な口の悪さから勘付いたのだった。ライオもダンタリオンからアモンが「リュカ」と呼ばれていたと聞き、彼が息子であると気づく。そこへ幻獣が現れる。一人キャラバンから離れて行動しているアモンに迫り、ライオはベヒモスとダンタリオンを連れ息子の元へ駆けつけ、間一髪ベヒモスが幻獣を倒す。過去を悔いていたと言うライオは償いのために身を削って「息子のための金」を貯蓄しており、その金をアモンに渡したいと訴えるが、アモンは当然激怒し、「殺す価値もない、自分で死ね」とナイフを突きつける。しかし新たに幻獣が現れ二人を襲い、ライオはアモンを庇って負傷する。
ソロモンはブラッククロースを次々生み出す呪いの指輪を止めるため、仲間たちを大量に召喚するという大技で指輪が持つフォトンを奪った。無茶な召喚のためにメギドたちの大半は空中に放り出されて降ってきた。広場で芸を披露していたニバスはそれをショーに仕立て上げ、住民たちは拍手喝采。万が一の際に避難誘導しやすくするため、人寄せとしてヴィネが考えた即興の催しだったが、図らずも大盛況となった。
逃げた残りの幻獣を追って森へ入るソロモンたち。そこでキャラバンを見つけ、隊長の傷からフォトンが流れ出し指輪に吸われているのを確認する。ソロモンたちは指輪を追って行き、残されたアモンは元父親と対峙する。死を前にしながら謝罪するライオに、アモンは「勝手に償ったつもりで死ぬな、生きて何十年と恨まれ続けろ」と叱責する。アモンは「リュカ」は死んだと言い、その名を完全に捨て過去を断ち切った。謝りたいなら死んだ息子に詫びていろ、と言うとアモンの身体が光を放ち始めた。
森の奥で「クリス・マウス」に進化した幻獣を倒したソロモンたちだったが、ネズミ幻獣の増殖は止まらない。そこでソロモンの指輪が青く光り、再召喚の時を告げる。ソロモンはアモンを再召喚することで呪いの指輪から最後のフォトンを奪い、指輪はボロボロになって崩れ雪のように吹き飛んで消えた。生まれ変わったアモンは「赤の他人」としてライオに別れを告げる。その後、役目を失った金で孤児院にプレゼントを配るライオの姿があった。
こうして事件は収束し、一行はアジトへ帰った。クノスペで楽しめなかった代わりにアジトで降魔祭を開催しようというヴィネの提案で、ウェパルやグラシャラボラスが準備に動き出す。
ソロモンは表に出て、思わぬ寒さに身を震わせた。空から雪が舞い始めていた。
【降魔祭について】
降誕祭ならぬ降魔祭。バケモノを退治したサンタに感謝を捧げ、そのお礼にサンタもプレゼントをくれるというもの。起源はなんとシトリーの幻獣退治。数百年前にまだ村だったクノスペを幻獣から救った際、名を名乗らなかったことから「雷光の騎士“サンダー”が村を救った」と伝わってしまい、それが転じて「サンタ」になったとのこと。衣装が赤いのは幻獣の返り血。物騒な由来である。シトリーはそれ以来毎年幻獣を倒しにやって来ているため、クノスペを訪れるサンタは紛れも無い本物。
なお「保健教室」より前の時系列に当たるため、シトリーが長命であることを知った他のメンバーは驚いていた。
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